SUPACOMの機材日記

撮影機材、録音機材の保守・管理など

Auto Nikkor 28mm f3.5

Auto Nikkor 28mm f3.5について

 

 発売時、世界で最も高精細な28mmだっただろう。

全ての絞り値において中央の解像度は目を見張るものがあり、歪曲が非常に少なく、1段でも絞ろうものならグロデスクなまでに鮮明な絵を結像する。

 

最短撮影距離:60cm

 一眼レフ用の広角レンズとしては他に類を見ない程に寄れない。広角レンズが被写体に寄れない事は致命的な欠点と思われるだろうが、この時代の技術の粋を尽くし完璧な画質を追求した結果である。

 

 寄れるが解像度の劣るレンズを設計するか、寄れない代わりに最高水準の画質を誇るレンズを設計するか、重大な決断に迫られた設計士が取った苦渋の選択が、このレンズである。

 

 どんなモノにでも生み出される過程で重大な欠点が発見されたり、ひと悶着あったりするものだが、様々な摺り合わせや、妥協などにより"無難な"製品となって世に出るため、顧客がそれを知る由もないのが通常である。

 

 このレンズは、そういった部分が他と違い、人間らしい。

 

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Auto Nikkor 28mm f3.5 @f5.6

 

 こういったエピソードが、撮影に向き合う姿勢の変化に繋がるのである。

故に、著者の生涯の伴侶とし、如何なる時も肌身離さずに持っている。